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恐怖の青竹先生!

 Antonio Carlos Jobim
 God and The Devil in The Land of The Sun


 さ。今回は青竹先生の巻だ。(前回の、『秋の夜長』の続きなのです)

 中学2年の1学期だった。

 3時間目の授業が終わり、ワイワイガヤガヤと廊下へ出て便所に向かった。

 2年B組の教室の前の廊下で、ヘス(後の時代に付いたあだ名だが、そのまま使います)が正座させられていた。〝お座り〟である。

 禿頭のような5厘刈りの頭は、乱暴に刈られたせいでアチコチ傷だらけで、その傷はカサブタとなっていた。

 だが、そのカサブタとは別に、額及び左側頭部より出血の後が、干上がった川の流れの如く、どす黒く乾いていた。傷口そのものは、黒ずんだ血痕の為、よく見えない。

「よお。ヘス、授業、終わってんだよ。ずーと座ってるつもりか?」
 と声をかけた。


「ほええ。ロッカ、(ず~と後の時代のペンネームだが、そのまま使います)青竹先生、まだ教室にいるから、ちょっと見てくれ」
 と答えた。


 ガラガラ戸(引き戸)は、まだ閉まっているので、足元にずらっと並ぶ、空気抜きの小さい引き戸の一つを開け、ヘスの隣りに寝転んで、これを覗いた。

「おい、授業、まだ続いてるぞ」
 と私。


「な。あの先生、興奮すると授業、終わらなくなるんだ。次の時間になってもやってるんだ。30分以上ズレ込んだ事もある」
 とヘス。


「次の先生、どうするんだ?」
 と聞くと、


「諦めて、終わるまで待ってる。でも次の先生が参観してると、喜んで、よけい長くなるんだ。先生方もそれを知ってるから、大抵、いなくなっちゃうけどな」
 と答えた。


「青竹に、文句は言えぬ、苦笑い。ってか。スゲエ奴だな」
 と言うと、


「そおよ! あ、凶器をもってます。太い青竹です! ガツンと一撃! ヒタイが割れましたァ! ブッチャー血ダルマ! 続いてもう一撃! 左耳の上、ヤッタア! またもや流血。コーレは凄い! ってコレだもんね!」

 とプロレス解説者の口調で答えた。(古館一郎は我々と同世代なので、まだアナウンサーじゃない。どこぞの中学生の筈)

 それにしても痛々しいヘスの頭であった。

 他人様のご子息のおつむを、このようにゾンザイに扱うとは、風紀委員にしても青竹にしても、なんと野蛮な人間であろうか。

 いくらヘスが、文字通り、頭デッカチで、子供時代からカ分数の異名を採っていたデカアタマだったにせよ、許される事ではない。





 私はラッキーだった。

 青竹は英語教師だったのだが、私とは別グループだった。
 ベビーラッシュ世代じゃないくせに、A~G組まであったお陰だ。

 3年間を通して1回だけしか授業を受けていない。
 その1回とは、コッチの若い女の先生が休んだ日に、代理で来たのだ。

 ヘスはずっと青竹の方のグループで、しかも、1年生の時は青竹が担任だった。

 そして、なんと、3年生の時も青竹が担任になったのだ。

 正座を続けながらも明るいヘスであった。

「ま。久々にやられちゃったよ。でもね、去年はアイツが担任だったから、毎日ブッ叩かれた。生きた心地がしなかったよ。それと比べりゃ今年は。へへへ天国だよ」(ヘスさん来年は、再び地獄ですけどー)


 ちなみにヘスの5厘刈りは、今回の風紀検査で引っ掛かった結果だ。

 5分刈りは日毎に伸び、すぐに座頭市のような感じの、なまぐさ坊主風の頭になる。

 抜き打ちの風紀検査は、そんな状態の奴を捕まえて、風紀委員がバリカンで5厘刈りにする為にあるのだ。

 もっとも、その前に床屋に行くように通達を出して、

「5厘刈りにしてこい!」

 という事なのだ。

 3分刈りで妥協する場合もあった。これは風紀委員との力関係による。

 ヘスの場合は通達に従わなかった結果だった。

「だって、床屋代がもったいないじゃん! どーせ5厘にされるなら、タダの方がいいじゃん」
 とヘスは言った。



 Antonio Carlos Jobim
 Stone Flower



 ヘスとは、そういうヤツだった。

 後年、某音楽学校で、有名ジャズシンガーの校長に目をかけられ、授業料免除の特待生となったにも関わらず、

「電車賃がもったいないじゃん」

 との理由で、ろくに通学しなかった。

「オマエ、校長センセにへっついてれば、プロのシンガーになれるゾ! いや、オマエは作曲もするから、アーチストだ!」
 と言ってやっても、


「まっさかあ」
 と、笑っていた。


 アチコチの3流バンドから引く手あまただった。

「上手いヤツがいる」と言う口コミによるものだ。

 英語の歌がそれらしく、しかもブルージーに歌えるヤツは引っ張りだこだった。

 ゴーゴーホールにビアガーデン、深夜専門の怪しげなダンスホール。かけ持ちで出演する売れっ子ぶり。

 同世代のチャー先生はハコバン時代、サラリーマンの3倍以上かせいだという伝説があるが、アチラはギロッポン界隈の一流ドコロの話。

 だが、埼玉寄り、三多摩、都下界隈だって、そこいらでバイトするより、ずっとオイシかった。

 その結果ヘスは、調子に乗って夜遊びしまくり。いつでも寝不足だった。

 そして、誰が見ても悪そうな尻軽女にムシられていた。


「ヘスの紹介になってきたでありんすよ」
 と参照太夫が言った。


 そだな。解ってる。

 もちょっと脱線する。「千一読本」はロッカバンドの監修だ。
 ヘスもロッカバンドの一員だから、これでいいのだ。



 とにかくヘスってヤツは、上昇志向が見事に欠落している奴だった。

 お膳立てを整えてやって、3食昼寝つきで、やっと動き出す。いや、自分じゃ動かないから、押すか引っ張らなきゃダメ。

 もともとアウトドア派の野人なので、浮世の評価や勝ち負けなどは、ゼンゼン気にしない。

 山にハイキングに行くと、一人で頂上まで2往復くらいしちゃって、珍しい木の実とか野草とかを採ってきて、自慢げに見せびらかす奴っているんだよ。

 自然科学がやったらめったら詳しい。〝田舎者の鏡〟って感じ。

 そーゆーヤツは虫も平気なんだ。虫、昆虫、ヒエ~!

 私は虫が大嫌いだ!

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 いかにもヘスらしい話を一つだけ。

 ヘスは、〝お調子のり〟のクセにプレッシャーに弱かった。

 高校時代、ヘスと私はバンドをやっていた。

 近場の某都市で、ポプコンの前身のようなコンサートがあった。

 リハーサルの時、ヘスが見あたらない。

「さては、逃げたナ」
 と私。

「まっさかー!」
「きっと便所だよ」
「ここまで来て、そんな馬鹿な!」

 とメンバーは口々に言ったのだが、皆、ヘスという人間を知らない。

 私は小学校以来の親友だからワカルのだ。

 はたして屋上へ上がって見下ろせば、大通りの歩道を、ヘスがスタコラ走って逃げて行く。

「おびゃー! 走ってるしー!」
「信じらんねー!」
「本物のクソヤローだー!」

 とメンバーは口々に叫んだ。

「あれがヘスだ!」
 言うなり私はイトコの原付を借りて追いかけた。

 幸いな事に、この都市に住んでいるイトコも社会人バンドに加入していて、そのバンドもコンサートに参加していた。
 そもそもこのコンサートは、イトコの誘いで参加したのだ。
 イトコはラッタッタで会場に来ていた。

 ──ブロローン!

 とエンジンをふかしてヘスに追いついた。


「おいヘス! 出演はやめた! 今日はやめ! ジャズ喫茶で一杯飲んで帰ろうぜ!」
 と騙した。


「ほんとけ?」
 と立ち止まった。


「んなわきゃねーだろ! 根性ナシがあ!」
 とフン捕まえて出演した。




 ウチのバンドはコピー2曲に、長いオリジナルを1曲演った。

 ワハハ。「ホワイト・ルーム」と、「青い影」だよ。

 オリジナルは「モジュール」というタイトルのサイケデリックサウンド。ああ、おっ恥ずかしい。ナマイキでした。

 テープ持ってるヤツが死んじゃって今は聴けない。合掌。生ぐさい話でゴメンナサイ。


 他のバンドはすべてコピー曲。

 だからロックバンドでのオリジナルは、ウチの一曲だけ。

 前半のフォーク部門でも、オリジナルは、ほんのちょっぴり。

 おーむねタクローかヨースイの曲を演る。

 イナカはまだ、そんな状況だった。




「結構イイデキだったろ! も一曲歌いたいナー! ダメかな?」
 
 とラストの曲が終わる時、ヘスが言った。


 これがヘスってヤツなのだ。



イナカに家が2軒あるんだよ。

1軒は、本当の山奥で、山小屋みたいなヤツ。
そこ帰ると山ぶどうとか木の実で、猿酒造ってね。
楽しいよ。

ロッカも、カバも、♪党首も、足腰弱ってるし、
野草もキノコもゼンゼン知らない。

こんなヤツラって、これからの時代は生き残れないね。
馬鹿め! って思いよりは、ふんとに哀れって感じだね。


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 Santana
 Stone Flower

 ふわー! 上の2曲の合体演奏です。
 知らなかった。(実は、上の2曲を。アハハハ。)

 いわゆる完全なるアレンジの盗用なのだが……。

 ここまでロコツってのも……ちょっと珍しい。

 サンタナ先生の……カルロス・ジョビン先生への
 オマージュ作品って事だったんですねえ。

 そうです。いくつになっても世の中って
 知らない事の方が多いんです。

 そりゃ、そうですよね。



 The Stone Flower (English subtitles). Part 1/8.
 コチラは映画「石の花」(始まりの10分)

 実は、カルロス・ジョビン(上の2曲)を聞いて、悩んでいる。

 石の花って、古いスタンダード或いは民謡だと思っていたからだ。

 映画の中に〝曲〟があるかと思ったのだが、
 この中には無い。

 もしかして……ジョビンの作曲だったワケ?

 う~ん。そのうち解るでしょうが……。



【さあ行くぞ! 恐怖の青竹先生!】


 青竹先生は、まことに書きにくい。

 太い青竹を随時携行し、情け容赦なくブッ叩く訳なのだが、暴力団のように粗暴な感じじゃない。

 黄昏中年丸出しって感じの小太りの40代半ば。

 アインシュタインのようなヘアースタイルは、後頭部がかなり薄くなってきている。

 大きな目が、他の先生方よりずっと知性的に見える。顔立ちが良いせいもある。

 滑舌が悪く、何を喋っているのか、まるで聞き取れない。

 機嫌が良い時はニコニコしながら、始終ジョークのような事を喋っているのだが、30代が主流の同僚教師達も、この先輩教師の言葉と意味を、聞き取っている風ではないのだ。

 青竹先生の言葉は、

「・・東許・・白樺・・山の母・・心日一の・・ちゃろ・・んかな! そこだ! な」

 と、こんな風に聴こえる。
 それに対して先生方は、

「ま、青竹先生はご心配なさらず、ねえ。コッチにまかして。はいはい。そーしますと、そーですか? そうですか? そーーーーですか」

 とか、

「あははは。そんなトコですか? はあ。ま。青竹先生。はあ。まあ。あははは。はいはい。あははは。はいはい。あは。あははは」

 と、いつでも、なだめ調子で、ごまかしているのだが、理解不能丸出しなのだ。

 正直な先生の場合は、

「は? 青竹先生、え? え? は? はいはいーーーっと、ワカランナッ。え?」

 こんな感じ。
 間違いなくキ印相手の会話となっている。(以上は、職員室で正座しながら観察)

 こんなヤツが英語の先生なのだ。

 読み間違えるとガツン! と太い青竹の一撃。
 発音が悪いとガツン!
 つっかえるとガツン!
 書き間違えるとガツン!
 テストの点が悪いとガツン!
 気に入らない態度にガツン!
 とにかくガツン!

 凶器の青竹は、頭、手、すね、背中、尻、太もも。所構わず炸裂した。
 まあマトモなトコと言ったら、女子を叩かない事と、頭頂部を外す事くらいだ。
(以上はヘスの証言)


 さすがに脳天への一撃は、マズイと思っているらしい。
 だが、額や側頭部、後頭部の流血なんか、へのかっぱ。

 授業を受けた男子生徒は気の毒だった。

 ヘスが今でもビビる訳だ。





 私も一度、食らったのだ。

 2年の3学期だった。

 5時限と6時限は「技術家庭」の時間だった。
 これは、いつも、G組とF組が一緒になって、F組の教室で授業が始まった。
 説明を聞いたり、打ち合わせをした後で、工作室へ移動するのだ。

 2年の時の私はG組だった。
 各自イスを持ってF組の教室に入るのだが、5時限目は自習(教科書を読むだけ)との事で、G組の教室でのんびりしていた。

 この頃ニューロックに目覚めた私は、ノートを開いて作曲中だ。

 ──ハイ。狂気の中で、凶器が光る! するとガン首はすっ飛び、ろくろっ(ロックンロール)首。
(キマッタな! イイ歌詞がでけた! 俺って天才かもしんない)

「そろそろ行くべえか」
 と、イスを持って廊下へ出ると、なんと、青竹先生がいたのだ。

「オハヨゴザイマス」
 と、挨拶をして、そそくさ通りすぎようとすると、

「オマエ! 待てえ!」
 と青竹先生。

 イスを持ったまま、直立不動になった。

「何だ! そのイスは?」
 と青竹先生の質問。

「ハイ。このイスは、トナリのF組に持って行くのであります」
 と答えると、

「なん・・んな時・・にひと・・廊下・・かもイ・・・ってるのか・・・てるん・・」
 と青竹先生。

「ハイ? 人数とイスの数が合わないと、えと……座れないので」

 ──ガツーン!

 と鈍い音がした。
 左側頭部に青竹の炸裂!
 なんだか左耳が、凄く熱い。
 咄嗟にしゃがみ込んだ。
 うずくまって、ダメージを受けたパフォーマンスをして、2撃めを断念させようと思ったからだ。

「立てっ!」

 反射的に立ち上がり、キヲツケの姿勢となった。

 ──ゴツーン!

 と、左の向こうずねに一撃。

 これは痛かった。涙目になったのが自分でもわかる。

 ──ガツーン!

 と続けざまに、もう一発きた。同じく左のスネだ。弁慶の泣き所とは良く言った。
 直立不動のまま、プルプルしながら耐えるしかない。

「このお・・つけはとっ・・味が・・いでしょ・・ねえ・あ・・」
 と、何かわめいている。

(うく~痛て~! このクソオヤジ! ガンメンキック食らわしちゃろか! シカシ痛て~! 何? 何? 当て字のクイズか? この、おみおつけは、とっても味が濃いでしょ? ねえ、あなたって・・・ふざけんなー!)

 痛いスネをさすりたいのだが、そんな事をしたら怒りに火を注ぐに決まっている。

 俺はサッカー部員らしく膝に手をあて、中腰の姿勢をとった。

 手は膝だ。スネまで伸ばしたいのだが、今はガマンだ。これで許してのポーズ。

「よーし!」
 と言った青竹先生は、俺の身体の周りをゆっくりと歩いて位置取りを決め、快心の一撃を繰り出した。

 一瞬、
(ケツバットか?)
 と思って、尻にチカラを込めた。だが裏をかかれた。

 ──バギン!

 と、右のスネに食らった。

「いっでー!」
 と、思わず声が出た。

 ガラガラ戸が開き、F組にいた連中が顔を出したのだが、すぐ引っ込めた。

 F組のガラガラ戸は開きっぱなし。

 恐くて、誰も閉められなくなったって事。

「ヨシ!」
 と言い残して青竹先生は、ゴジラのようにゆっくりとF組の教室に入って行った。

「何で・・業中な・・戸が開・・ぱなし・・だあ!」
 と吠えながら。


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 大西由希子 ダンスと音楽の企画シリーズ
 「石の花」vol.1_#2

 石の花つながりで……。

 暴力ってホントに嫌ですね。

 これを見て、気を静めましょう。

 シカシ、イー女ですね。

 失礼しました。








   ふわあ    素敵な曲ね 

 
    
       水色の世界  加橋かつみ






 ……本当に……。

 やはり傍観者の教師達が悪いな。みんな、自分もビンタマンだからね。


 このように慢性的な暴力の横行は、正常な感覚をマヒさせるんです。
 やられている方も「それがアタリマエダ」と、納得してしまう。


 昔、ナチスドイツの絶滅収容所(確かトレブリンカだったと思うけど、ムカシ読んだ本なもんで、)で、転属して行ったSSの看守が、久々に戻ってきた。

 2~3ヶ月が寿命の相場だったユダヤ人作業員(コマンドと呼ばれていた)の中に見覚えのある顔がいた。

「キサマ、まだ生きとったのかア。シブトイヤツだ。シカシ懐かしいな」

「あ、どーも。お陰さまで……」

 こんな会話をしたという。

 横丁の隠居と近所のオッサンの会話と何ら変わりゃしない。

 どんなに酷い環境でも、それは人間社会であり、人間社会とは、つまり世間であり、世間とは、悲劇性より喜劇性の方が勝っているものなのだ。

 だから、もう、笑うしかない。







 どーしても社会派になれない私は、
 ヒューマニストでもない。

 だって世の中には、

 こんなに可愛らしいヤツだっているのだから。

 動物のほうがマシだと言うつもりはない。

 随時世話を焼く程、好きな訳じゃないし。

 そこそこ〝人間好き〟だから、字を書いている訳だ。


 シカシ……可愛いね。




 「猫にゃんカッワイイ!」      「ピッピちゃん乗せて、どこいくの?」           
「ピーたん」           
 「お昼のお弁当ですか?」 「ピッピちゃんの方が強そう」              

           




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未分類 | コメント(0) | トラックバック(0) | 2011/08/30 01:02
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